夏バテの肝臓には穀物酢

夏といえばビール。暑い1日の終わりに一気に飲み干すあの瞬間がやっぱり格別です。しかし、この快感が実はくせ者。杯を重ねるうちに、おつまみもろくに食べないまま、おなかがふくれてしまいます。夏場は胃や腸の働きが低下し、ただでさえ食欲が衰えがちです。気がついたら夕食らしきものはとっていなかった、などといったように、食事をきちんととらないことにもなりがち。

こうなると、知らず知らずのうちに肝臓にも負担がかかり、機能も衰えていきます。こんな肝臓の働きの衰えを防いで元気に夏を乗り切るのに、実は、強力な助っ人となってくれるものがあったのです。それはお酢です。

お酢はその原料や製法によって、穀物酢、果実酢、合成酢などに分けられます。
穀物酢は米、麦、とうもろこしなどの穀物からつくられるもので、精米を原料とする米酢や、玄米から作る玄米酢などがおなじみです。果実酢は文字どおり果物からつくられる酢で、果実のしぼり汁を入れてつくるリンゴ酢やブドウからつくるワイン酢などがあります。合成酢というのは氷酢酸を水で薄めたものです。

これらの中でも、肝臓の機能を助けてくれるのは、米酢と玄米酢です。特に、米だけを原料に自然のままの製法で作られた天然醸造のものが、強力な助っ人となってくれるのです。

強力な助っ人である秘密は、穀物酢に含まれるアミノ酸にあります。その秘密を明らかにするために、まず天然醸造の米酢の製法について説明しましょう。材料は米と水と米麹です。はじめに、蒸した米と水、米麹をかめに入れてお酒を造ります。そして、このお酒が空気中の酢酸菌によって酢酸発酵し、酢ができます。酢をさらに熟成させたものが、独特のコクと香りを持つ米酢というわけです。この醸造・熟成にはおよそ1年間かかります。

さて、米には、100グラムあたり約14グラムのタンパク質が含まれています。このタンパク質が、発酵と熟成の過程でアミノ酸に分解され、米酢にそっくり含まれるわけです。このアミノ酸はメチオニン、システイン、グルタミンといった種類で、これらが、肝臓の働きを助け、弱った肝臓の機能を回復するのに役立つのです。肝臓は食物に含まれるタンパク質をアミノ酸に分解します。
そして、さらに、自分の体に必要なタンパク質につくりかえるという作業をしています。先に述べた米酢や玄米酢に含まれるアミノ酸は、そのままの形で、体に必要なタンパク質を合成するために使うことができます。

つまり、肝臓は食物からとったタンパク質をアミノ酸に分解するという手間を省いて、効率よくタンパク質の合成ができるというわけです。しかも、酢に含まれるアミノ酸は肝臓に負担をかけないというだけでなく、弱った肝臓自体の修復もしてくれますから、肝臓病の病中、病後の食事療法にも最適といえます。

特に体がバテぎみの夏は、酢をたっぷりとって、無口で働き者の肝臓をいたわってあげたいものです。

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