昔から「肝臓が悪くなったら、しじみのみそ汁を飲むとよい」といわれてきました。気の利いた小料理屋などでは、肝臓をいたわってください、という配慮でしょうか、お酒のあとにしじみのみそ汁を出しているところもあるようです。
昔からのこの素朴な習慣を、迷信とばかり笑うことはできません。というのも、しじみには肝臓を守るために必要とされるタンパク質やビタミン、ミネラルなどの栄養素が豊富に含まれているからです。さらに、しじみにはすぐれた点があります。タウリンという含硫アミノ酸を豊富に含んでいることです。
このタウリンは、体の中でさまざまな役割を果たす有効物質で、1988年には肝臓病や心臓病の治療薬として認められ、積極的に使用されてすぐれた効果を上げています。ではタウリンは、肝臓に対して具体的にどんな作用を持っているのでしょうか。
第一に、タウリンにはATPという酵素の合成を促す働きがあります。ATPは細胞の営みに必要なもので、肝臓の細胞や心臓の筋肉、骨格筋などに不可欠な物質です。つまり、タウリンが十分にあれば、ATPがどんどん合成されて肝臓が丈夫になり、心臓の筋肉が強化され、元気も出るというわけです。第二に、タウリンは、肝臓の細胞に直接働いて、肝細胞を保護すると同時に強化したり、肝機能を高めたりする作用を持っています。この作用から、最近では慢性肝障害や急性肝炎の治療にタウリンが使用されるようになっていることは、先ほどふれたとおりです。ただし、しじみにはコレステロールがけっこう含まれています。この点、不安を感じる人もいるかもしれませんが、タウリンとともに不飽和脂肪酸も豊富にあるため、しじみを食べても、血中コレステロールが高くなる心配はまずありません。
むしろ、タウリンと不飽和脂肪酸によって、コレステロールを低下させる効果のほうが大きいといえます。ところで、タウリンには水にとけやすい性質があります。たとえば貝を水で煮ると、タウリンの約30%は煮汁の中にとけ出してくることが知られています。
ここに、みそ汁のようなとり方の利点が出てきます。みそ汁なら、しじみからとけ出したタウリンをのがさずとれるわけです。また、みその大豆タンパクにも、肝臓を守るコリンなどのビタミンB群が多く含まれており、しじみのタウリンと相まって、いっそうの効果が期待できます。
こうしてみると、昔からいわれてきたとおり「しじみのみそ汁」は、確かに肝臓を守ってくれることがわかります。経験をもとにした先人の知恵が、科学的に裏づけされたからには、しじみのみそ汁を、ぜひもう一度見直していただきたいと思います。なおタウリンは、あさりやはまぐり、いか、たこ、カキなどにも豊富に含まれています。いわゆる魚介類に多く含まれる成分ですが、みそ汁で飲む場合、しじみが一番おいしいということでしょう。
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