晩秋から冬にかけての味覚の1つにカキがあります。酒飲みにとっては、磯の風味豊かな酢ガキを肴に熱欄で一杯というのは、こたえられない味わいでしょう。
フランスあたりでは、レモン汁をしぼっただけの生ガキを肴にワインを楽しむ光景もよく見かけられます。生ガキには、酢やレモン、すだち、ゆずなど、すっぱい味がよく合います。これがまたアルコール飲料にもうってつけの味わいとなります。
それだけではありません。昔から「カキは酒毒を消す」といわれるほど、カキ自体にも二日酔いや悪酔いの予防効果があるうえ、アルコールの害から肝臓を守る作用もあるのです。
ご存じのように、肝臓はさまざまな物質の「合成」「分解」「解毒」など重要な働きをしていて、大化学工場にもたとえられます。こうした肝臓の働きには、グリコーゲンやアミノ酸が欠かせませんし、そのほか各種ビタミンやミネラルをも必要とします。
カキには、これらの栄養素が豊富に、しかもバランスよく含まれているのです。まず、カキ肉に多く含まれるグリコーゲンですが、これは肝臓に力をつける働きをしています。また、グリコーゲンは代謝されて、グルクロン酸の原料にもなります。グルクロン酸は、肝臓を強くし、解毒作用を持つ物質です。
解毒作用といえばアミノ酸もかかわっており、これもカキには豊富に含まれています。グルタミン、グリシン、メチオニン、シスチン、タウリンなどといった各種のアミノ酸が体内にできた毒素を分解したり包み込んだりして、体外に運び出す役目を果たしているのです。
中でも特にタウリンは、肝臓の薬として臨床的にもたくさん使われているほどです。さて、肝臓の働きを高めれば、当然、アルコールの害も減らし、二日酔いや悪酔いの予防になります。アルコールは体内に入ると、肝臓で分解され、アセトアルデヒドという物質に変わります。
このアセトアルデヒドが二日酔いや悪酔いを起こす張本人で、肝臓に障害をもたらす有害物質なのです。
ところが、カキに含まれているグリコーゲンやアミノ酸は、肝臓の働きを高め、解毒作用を促進するので、アセトアルデヒドをすばやく分解して無毒化してしまいます。
さらに、大酒を飲んで肝細胞が破壊されたときには、アミノ酸はその修復材料ともなるのです。酒飲みたる者、常々肝臓にはお世話になりっばなしで、不幸の限りを尽くしているのですから、せめて肴にはカキのように肝臓の栄養になり、役に立つ食べ物を選ぶようにしたいものです。カキを味わう毒口同の方法といえば、やはり新鮮な生ガキをポン酢か二杯酢であえて食べる酢ガキに尽きるでしょう。熱を加えないため、カキに含まれるビタミン類の損失がありませんし、ミネラルやタウリンなども有効に摂取できます。
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