いまでもエビやカニは大変な高コレステロール食品だと思っている人が少なくありません。昔の食品分析によるとたしかに非常に高い数値になっているのですが、現在は修正されています。
高い数値になっていたのは、エビ、カニ、カキ、ハマグリなどにふくまれているある種の ステロール を コレステロール と間違えていたからです。そのステロールの 30~40% がコレステロールに転換されるにすぎないのです。そして、この「コレステロールでないステロール」 は有害でなく、むしろ有益であることが確認されています。
ワシントン大学のマリアン・チャイルドス博士らの研究によると、この海中生物のステロールはコレステロールの吸収を抑えることがわかりました。
博士らの最近の分析によると、カキ、ハマグリ、アサリ、ムール貝、ホタテ貝にふくまれているコレステロールの量はわずかであることがわかりました。それに比べるとエビ、カニは少し多いけれども多量というほどではありません。多量にふくんでいるのはイカです。
博士は脂肪の代謝についての権威ですが、男性の志願者を募り、肉、卵、ミルク、チーズなどの高蛋白食品の代わりにカキ、ハマグリ、カニ、エビ、イカを食べてもらって血中コレステロール値と中性脂肪値の変化を調査しました。
3週間、1日に2回、連続して食べてもらいましたが、その結果、ハマグリはなんと中性脂肪値を61% も下げました。カキは41% 、カニは23% 下げました。コレステロールについては、カキ、ハマグリ、カニ、いずれも9% 下げました。カニを食べるとコレステロールが上がるという説は間違っていたことが証明されました。
「血中コレステロールに関していえば、エビとイカは卵や肉に比べてよくもないし悪くもない」と、博士は言っています。以上はカニ、エビの名誉の回復のために述べたのですが、貝類と甲殻類に共通するのは、実は低脂肪食品というところです。
魚と比べてもふくまれている総脂肪の量は極めて少ないのです。また蛋白質が単純なかたちなので、消化が容易ですぐに吸収されます。つまり、傑出した低脂肪・高蛋白食品なのです。だからその特長を生かした調理をすることが望まれます。
たとえば、カキフライはわが国洋食の代表的料理ですが、フライにすると低脂肪というせっかくのカキの利点は失われてしまうことになります。カキは生にレモンあるいはポン酢をかけて食べるのがいちばんいいのですが、生食できない鮮度のものも、油を使わない加熱調理の方法はたくさんあります。
貝類と甲殻類の加熱調理は、フライやソテーを避け、ベイク(オーブンで焼く)、グリルなべ(網焼き)、蒸す、シチュー(例えばはま吸い、鍋、ブイヤベース… ) などの方法をとることが望ましいでしょう。
ある大学の研究者は貝類と甲殻類を食べると気分がよくなり、脳の働きが活発になることを明らかにしています。これは、消化のよいすぐれた蛋白源であるために、アミノ酸の チロジン が多量に脳や副腎に送られて、神経伝達物質の ドーパミン と ノルエピネフリン の産出が促進されるからです。
カニやエビの殻部分の キトサン にはコレステロールを下げる作用があります。
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